眼を奪うレイアウトの立役者、それは美しいライブロック。
鑑賞面はもちろんのこと生命線である水質維持という面からも必要不可欠なマテリアルである。

  
■ナチュラルシステムとライブロック

 魅力的なサンゴ水槽を構築される場合に主流となっている飼育方法がナチュラルシステムというものです。
水槽の大小を含め、さまざまな飼育環境に取り入れられ、すっかり馴染みのある飼育方法となりました。
現在ではナチュラルシステムといってもいろいろな方式や考え方の違いによって、飼育者の選択肢は幅広いのですが、どのようなスタイルであっても「ライブロック」は必要とされているものです。
このナチュラルシステム、基本“天然サイクルに従った環境維持”を意味するものであり、そこで重要となっているものの一つがライブロックなるものの存在です。
ライブロックは自然界でサンゴや熱帯性海水魚が生息する地域、その周辺に存在しています。

ライブロックは実際に生命サイクルを営んでいる、天然ろ過のマテリアルとして捉えられ、閉鎖環境下である水槽内飼育においても、この自然サイクルを予めもったライブロックを導入することで環境安定に対するメリットがでてくるというわけです。
つまり、自然界で機能している浄化サイクルのメカニズムを水槽内に取り入れる結果、水質の安定を図れるというのが最大のポイントといえるのです。
ライブロックは、偉大な天然のろ過サイクルを水槽内で再現するバトンの役割を果たしていると考えて良いでしょう。
海水水槽、サンゴ水槽で主流となっているナチュラルシステムの成否はこのライブロックといかにうまく向き合い、長期的にコントロールできるかにかかっているといっても過言ではありません。

  

刻々と変化する水槽内。
その中でも日々美しさを増すライブロックは、理想的な環境維持が出来ているかを眼で見て判断できる貴重な存在だ。

  
■レイアウトの完成度を左右するライブロックの質

 美しいライブロックでレイアウトされた水槽は、自然観の演出という点でも非常に魅力的です。
レイアウトされるサンゴや海水魚の美しさを引き出し、鑑賞面だけで考えてもすばらしいものだと思います。
美しいライブロックでレイアウトされた水槽を見ると、もう後戻りできなくなるのではと思えてしまうほどです。
反対に、生命感に優れないバクテリアが少ないライブロック、石灰藻が少なく、艶のないライブロックでは最終的に環境維持の面でも不利になります。
できるだけ瑞々しく、色彩美に優れたライブロックを導入することで鑑賞面、水質面ともに理想的な環境構築につながることになるはずです。

また、起伏に富んだ形状のライブロックは生命活動の盛んな海域に存在していた場合が多く、ろ過能力や潜在する微生物や環形動物の類が豊富に付着し、結果的に多層的なろ過サイクルを構築するにアドバンテージにつながるはずです。
外見的要素からでもライブロックの良し悪しは見慣れてくるほどに奥深いものであると実感させられるものです。

  

サンゴが上手く飼育できるかどうかを心配する前に、ライブロックのコンディションを気にすべき・・・それほどライブロックの“なじみ”が水槽の成否に関わる要因といえる。
ライブロックの表面をよく観察することで、水槽内に導入されたライブロックがどういう反応を起こしているかを察知することができる場合もある。
投入時には確認できなかった白い膜や黒い染みが増えている場合は、速やかなキュアリングの対応を求められる場合も多い。
まずはじっくり観察することである。

  
■石灰藻について

 理想的なライブロックの条件として美しい石灰藻の付着、その密度感はろ過能力を推算するうえで重要なファクターです。
石灰藻が多く付着しているライブロックが重要とされる理由としては、鑑賞面の美しさはもちろん、それ以上に「石灰藻の繁茂している環境では同時にサンゴにとっても理想的」という考え方によるものです。
その効果を持続させるために出来るだけ石灰藻が繁茂したライブロックを水槽内に導入したいと考えるのです。
(水質が安定してサンゴのコンディションも良い環境ではライブロックの石灰藻も同様に繁茂してきます。)
サンゴの多くは、褐虫藻というサンゴの体内に共生している光合成をしてサンゴに栄養補給するものを保有しています。

そしてその存在がサンゴの生命維持に欠かせません。 沖縄などでよく問題にされている“白化現象”はこの褐虫藻がサンゴから抜け出してしまったため光合成による栄養補給が出来ずに、結果的にサンゴが衰弱して、全滅してしまう現象です。
(逆に言えばサンゴの美しい色彩を表現しているのが褐虫藻ということもできますが、ここでは話の内容が違うので省略します。)
そうすると、褐虫藻の活動がスムーズだとサンゴの調子も順調だと言い換えることができます。
そして褐虫藻のコンディションが整う環境とライブロックの石灰藻が繁茂する条件とが近い存在として知られているからです。
つまり、石灰藻の繁茂する環境=サンゴの調子が良い環境 と関係付けられるわけです。
(石灰藻がコンディションよく増殖していることを水質バロメーターとして考えることもできるのです。)
ただし厳密には石灰藻が繁茂する場所は必ずしもサンゴが生息している場所ということではなく、様々な外的要因とライブロックの土台となる素材の影響、水温、水深、そして海域の栄養素などが複雑に絡み合い、水槽内で維持しやすいライブロックとそうでないライブロックに区分けされるのです。
その結果同じように見えるライブロックでも水槽内に導入された後で、さまざまに違う反応が起こり、結果も変わるのです。
例えば興味深い一件として、水槽内で抜群のろ過能力を誇るライブロックは、実はサンゴが生息していない場所に存在していた・・・などというケースも発生するほどで、きれいなミドリイシが生息する場所にあるライブロックが一番優れているだろう・・・と先入観にとらわれないように考えるのがライブロックを追及するときに大切なことといえるでしょう。
(詳しくはキュアリングの項目で)


  

ライブロックの表面、そして内部では眼に見える付着動物や肉眼で確認できない微細レベルでの生命が無数に宿っている。
鑑賞のために投入された生体であってもライブロックによって生命を支えている場合も多く、食物連鎖の重要性を切に感じる部分である。

  
■ライブロックの生息場所、素材などについて

 ライブロックのほとんどは熱帯地域のサンゴ礁域に存在しています。もともとライブロックの素材は、本来そこで生息していたサンゴの骨格である場合が多く、何らかの原因で死滅したサンゴの残骸(骨格)に対して、微生物や藻類をはじめとした生命コロニーが付着しているものと考えるのが一般的です。
ライブロックの生息場所は、美しい海域を象徴するようなテーブルサンゴの集落はもちろん、海洋汚染が進んだ滞留域にまで生息しています。
深度については大潮の日には干上がってしまうほどの浅瀬から光がほとんど届かない30m以深、ドロップオフや洞窟にも存在しています。(ライブロックという定義が難しいところではありますが)
次に石灰藻という視点からみれば、光が豊富に当たる部分に繁茂すると捉えられがちですが、実は直接光があたらない場所、場合によっては、富栄養下環境でより多くの石灰藻が繁茂しているのをご存知のかたもいらっしゃるかもしれません。

 ライブロックと一言で言っても様々な違いがあるものです。
例えば、浄化サイクルの先入観からか、通常だと理想的に考えられる造礁サンゴが密生する地域のライブロックを水槽内に導入した場合では、あまりに複雑に生息する微生物や環形動物、カイメン、藻類をはじめとした生命サイクルが一気に崩れ、輸送中はもとより水槽内に導入されたあと悪循環により壊滅に向かってしまうライブロックもあるほどです。
また、ライブロック化する基盤の違いも環境サイクルを預ける際には、大きなポイントとなってきます。たとえば過去にサンゴ礁であった海域は共通だとしても、どのような種類のサンゴ(骨格)であったのかで好気や嫌気のバクテリアが生存できるウエイトも変化します。
岩石状の単層質とスポンジ状の多孔質ではその上に連鎖する生命サイクルにも差が出てしまう・・・ということになります。
外見上の判断からか、ライブロックの浄化能力については表面、上層部分だけでの作用と捉えがちですが、基盤の深部でゆっくり起こる浄化作用も非常に重要となっています。
ろ過材や砂中では不可能な、浄化連鎖がライブロックの一番の恩恵といえるのではないでしょうか。
上記のことからもライブロックの知識と導入については、まさに「生体同様」と考え、水槽に馴染みやすいように取り計らうのも飼育者の技術となってくるでしょう。

  

キュアリングを行わずとも、スムーズに馴染んでくれるライブロックも存在する。そのようなライブロックにめぐり合えたなら、飼育も簡単に映るだろう。ただしぶっつけ本番のリスクは大きく、失敗したときのダメージは大きい。 キュアリングを行った結果、一時的にろ過能力が低下したとしても、その後にそのライブロックが劇的に成長し、すばらしいろ過能力と美観を取り戻すはずである。 そういった生命感あふれる変化もライブロックの魅力であり、長期間水槽で育まれたライブロックはまさに宝物といえるはずだ。

  
■ライブロックのキュアリングについて

 大自然の再現、サンゴ礁の再現を水槽内で行う・・・という大業を成立させるのには、ライブロックの存在が必要不可欠であることは想像に難くありません。
しかしながら、そのライブロック自体も生命物質であり、万能効果を発揮してくれるものではありません。
新しく無菌状態から立ち上げた水槽内の環境と、自然サイクルの中で長期間はぐくまれてきた、そのライブロックがあった環境とでは、大きな差があるのは当然です。
浄化サイクルを担うライブロックであったとしても、その環境変化のギャップに多くの微生物や付着生物は死滅してしまいます。海中から引き上げられ、輸送中にもそれは進行してゆきます。
場合によってはその後、水槽に導入したあとで崩壊に向かうこともあるほどです。
ライブロックの導入・追加がきっかけで環境が悪化し、全滅を招く可能性もあるということです。

そこで必要となってくるのが、不特定多数の反応を起こす要因を予め淘汰し、より安全に水槽内での順化をしやすい要素に絞る下ごしらえする作業、それが「キュアリング」というものなのです。
輸送中にはすでにライブロックが立ち上がらないほどに死滅している場合や、輸送後に海水に戻ったときに別次元の腐敗が進行してしまう場合には、キュアリングを行ったとしても無駄に終わる場合もあるほど、ライブロックの生息域や流通経路には吟味が必要です。
そして、さらに難しいのは過剰なキュアリングは逆にろ過能力を発揮する要因を減少させることにもなるので、“キュアリング期間の見極め”が大切になってくるということです。

  

一昔前の人工ライブロックにあった偏見は現在かなり解消されたと思われる。今後、さらなるメリットをマリンアクアリウムに齎してくれることを期待している。
近い将来、手に入れやすい価格を含めた条件が整い、さらに浸透してくるはずである。

  
■人工ライブロックについて

 現在、アクアリウムを取り巻く環境の中で注目されているのが人工ライブロックというものです。
ライブロックの恩恵を、人為的にコントロールして形成しようとする試みです。
現在では、海外もの、国内ものともに流通しています。
自然界に存在するライブロックは、不特定多数の付着生物がメリット、デメリット双方に働き、キュアリング作業をはじめとするリスクもついて回りますが人工ライブロックではそのような不安が少ないことも今後のライブロック市場をとりまくアドバンテージとなりそうです。
さらにライブロック内に常棲するカニやシャコ、刺胞毒性の強いイソギンチャク類、腐敗性が強くライブロック内部まで浸透したカイメン類がないことも人工ライブロックのメリットとして挙げられます。

ただし、素材の違いによる食物連鎖の変化や水槽内での活性率など、追求するとより魅力的になる要素を残しているのが現在の人工ライブロックを取り巻く環境といえるでしょう。
今後、さらに魅力的な人工ライブロックがリリースされてくることを期待したいものです。